安田登 能から身体能力を高める心得❷

トレーニング

安田登は能楽師にして、米国生まれのボディーワーク「ロルフィング」の日本で数少ない公認の
ロルファー
丹田呼吸や「身」理論などの東洋の身体技法をも意識したセッションにより、なめらかで機能的な動きを導き出し、スポーツ選手や俳優などの身体調整を手がけている

 

「足振り」で大腰筋を鍛える

足振りは片方の足を台に乗せて立ち、もう一方の足を時計の振り子のように前後に振るだけの簡単動作です

体をまっすぐに保ち、股関節からゆっくりと静かに、歩幅よりも小さく「足が腰から伸びている」「胸から足が伸びている」というイメージで大腰筋(腸腰筋)を必ず意識して振ります

野沢武史(たけし)選手

ラグビー日本代表にも選ばれた神戸製鋼の野沢武史(たけし)選手は「足振り」で体に竹のようなしなりができたといいます

初めは半信半疑であった「足振り」を片方につき1日400回を基本に徐々に足をフル回数をふやしました

足振りを増やしていくと、明らかに体の様子が変わってきました

①疲れなくなる
②ダッシュの1歩目がスムーズに素早くなる
③竹がしなるような体に変化
④姿勢が正しくなる
⑤体が柔らかくなる

そしてあらゆる場面でパフォーマンスの向上が自分で自覚でき流ようになります

 

深い呼吸と腹から出す声

大腰筋の活性化する身体技法は深い呼吸を促していることにもなります

深い呼吸から生まれる深い声は、私たちが深層に持っている潜在的な可能性を引き出す力を持っているのです

呼吸横隔膜と骨盤横隔膜を使う深い声とそれにつながる大腰筋を中心とした深層筋の連動によって最大限のパフォーマンスを発揮できるのです

 

軸意識

日本古来の伝統芸能や武道における「立つ」は、すべて3つの軸意識で行われました

①自分の体軸を体感し(体軸感覚)
②下半身は重心(丹田)から地球の中心に向かって下方向に伸び(重心感覚)
③上半身は天に向かって上方向に伸びる感覚(スカイフック感覚)

理想的に「立つ」基本は、体の真ん中にある一本の軸を体感することで、すべてのスポーツシーンで安定性を得ることができます

 

すり足

能ではあらゆる動きにおいて「すり足」が基本とされ、それは大腰筋をはじめとする深層筋を使わなければ、不可能な動きになります

この「すり足」は大腰筋を活性化させるために、スポーツシーンにおけるパフォーマンス能力を高めるのです

「すり足」=大腰筋フォーキングは4つのパートに分けることができます
①股関節から足裏をすって一歩踏み出す
②足首を足全体の支点として爪先をあげる
③深層底屈筋を使い爪先を下げる
④指先で床をしっかりとつかむ

 

「差シ込ミ」「ヒラキ」

肩甲骨から出ている長い腕を意識し、深層の自己からの腕の動きを「翼意識」と呼びます

この「翼意識」を鍛えるのに最も良いのが能の型である「差シ込ミ」「ヒラキ」です

「差シ込ミ」「ヒラキ」の稽古は常に「下半身と腕の連動」「大腰筋と菱形筋」のネットワーク・連動性を意識しながら行います

全身の深層筋ネットワークによりパフォーマンスを最大限に高めます

①軸を意識して「立つ」
②「差シ込ミ」左足を出しながら右腕を少し上げる
③右足を出しながら、さらに腕を上げていく
深層筋ネットワークを意識して鳥が翼を広げるような感覚で
④左、右と足を出しながらさらに腕を上げる
最後には自分の存在が扇の先に集約されるようなつもりで
⑤「ヒラキ」左足をちょっと引いて腕を広げ、右足を引いて腕をさらに広げる
菱形筋と翼意識で
⑥左足を引き揃える
⑦元の「立つ」に戻る

 

 

 

[参考文献]
安田登「脳に学ぶ身体技法」ベースボール・マガジン社
安田登「日本人の身体能力を高める『和の所作』」マキノ出版

コメント