小出監督 女子マラソン高橋尚子、有森裕子を育てた名伯楽に学ぶべきこと 

指導者学

シドニー五輪マラソン金メダリストの高橋尚子、五輪二大会連続メダリスト有森裕子、世界陸上金メダリストの鈴木博美、千葉すずなどを育てた陸上界の名監督の指導法とは?

走ることが大好きな飢えた少年

小出監督自身、小学校の時の先生の一言で走ることに熱中し、高校時代までは自分で練習プランを立てたりして夢中で走り回っていた少年時代をおくった

箱根駅伝への強い憧れがありながらも、貧しい農家の長男に生まれ親の反対もあり、経済的な理由で大学の陸上部に入れず、農家を継いだが諦めきれず家出をする

紆余曲折した上、22歳で順天堂大学陸上部に念願叶って入学

大学時代には夢叶って箱根駅伝に出場するが、最終学年の4年時に怪我で箱根駅伝に出場が果たされず、悔しい思いをした

走れなくて泣いた悔しさが後年、監督稼業の原点になっていると本人も語っている

シドニー五輪金メダルの裏側にあった尋常でない準備5つ

1、勝負所32キロ地点に宿舎を借り、レース前日にはスタート地点に近いホテルを取る徹底ぶり

2、『これなら負けるわけはない。やるべきことをすべてやって来た当然の勝利』とまで言い切った完璧なトレーニング

3、高橋尚子が試走を重ね、1キロごとに覚えてしまった程の入念なコース研究

4、本番コースの勝負所に似た少し負荷ののかかったところを探し、調整場所として設定する徹底ぶり

5、『俺の命はお前にやるよ。金メダルを獲ったら死んでもいいよ』と書いたメモを高橋に渡したメンタルの準備

 

選手を大成させたければ、二十歳まで遊ばせること?

ランナーを将来大成させたければ、長期的な計画で二十歳ぐらいまでは遊ばせる

高橋尚子はそれに当てはまっていた

高橋の高校時代、陸上部の顧問をしていた校長先生の話で『高校時代ガンガンやらせると大学に入ってみんな辞めてしまう』と話していた

小出監督の指導論でも高校、大学と早い段階で酷使された選手はピーク時に悪影響が出てしまうとのこと

 

既成概念にとらわれない、選手に合わせたトレーニングと調整法

寝ても醒めても駅伝、陸上漬けの小出監督は何人もの選手を見てきて、選手との日々の練習で明け暮れる中から選手、個々の調整方法を見つけてきた

選手の持ち味を覚えるのは最低一年半はかかると明かしている

指導とは試行錯誤の繰り返しで、一つの練習法で結果が出なければ、さらに工夫を凝らして別の練習法を考え、選手の持っている一番いいところが出せるように努力すること

指導者の仕事とは結局『強くなろう、強くなりたい』という心を作ってやること

指導で一番肝心な要素は粘りであるとも

高い目標、全国レベル、世界レベルを目指すのであれば、質量ともに全国レベル、世界レベルの練習を毎日続けるしかない

初めはしんどいが、続ければ人間の体はどんどん変わっていく

世界レベルの練習ができる素質を見抜き、選手とは真剣に向き合い、何度心が折れても諦めず、勇気を持って試してみる

 

小出マジックの秘密

マジックと言われる正体はある意味、洗脳なのかもしれません

『絶対できる、メダルをとる』と自己暗示にかけ、強く信じ込む気持ちが何事もできるようにする

陸上では駄馬からサラブレッドに変わることがたまに起こる
まさに駄馬でハシにもボウにも掛からない、中距離選手だった有森がすごいところがあるとすれば、気持ちが他人よりも数段強いところ

既成概念に囚われない、それぞれに合わせた独自トレーニングと調整法

常識通りの練習からは常識通りの結果しか生まれない

常識を超えるような発想から成功は生まれる

選手には固定概念を植え付けず、強制は絶対にしない、最終的な決断は選手本人にさせた

押し付けられてる意識では選手は伸びないからだ

選手が天狗になったら、親の前でも怒って、鼻をおった

小出監督は選手のためなら死んでも良い覚悟をしていた

大事なのは小出マジック⁈

結果責任を持つなら、他人の意見に動かされるな

チームの監督は何百人といるが、持ち味が違う

食べ物は何でもOK、ただしベスト体重を調整出来ることと、結果を出せれば問わない

世界一になるために世界一の練習環境、衣、食、住の準備する

練習は工夫次第、結果を出せばそれが正しくなる

『こんなに苦しい練習をしているのだから、勝たなくちゃいけないと思うだろうが、それよりもっと大事なことは、一生懸命、一日一日を生きることだよ
そこに結果がついてくるだけだから、何も怖がることもないし、心配することもない
毎日毎日、練習がこんなにできて楽しいなと思っていればいい
世界一頑張っているんだから、必ず世界一になれるんだよ』とも語りかけた

試合のイメージ、10年先、20年先のイメージを描かせた

陸上が好きでたまらない選手と陸上が好きでたまらない監督が出会う

結局多くの選手に囲まれて小出監督自身が指導されてる

 

 

小出監督の申し子、高橋尚子

高橋尚子はたぐいまれな走りの求道者で、理想の走りを入部前からしており、大食いと物持ちが良く、素直さと底抜けの人の良さが魅力

走ることが本当に好きで、マラソンが大好き、試合で負けてもケロッとしていた

走ることが大好きで50歳まで走るから、ずっと見ててくださいねと言っていた

高橋には青春時代を陸上に捧げたのだから、サッカーの中田選手のように稼がせてあげたい

 

高橋尚子がシドニーで金メダルを獲った準備は、有森裕子の2度の五輪から始まっていた?

指導者にとっての1人目の天才的才能に出会った経験値が、2人目の天才的な才能を鬼才へと進化させる原動力となる

高校野球の甲子園常連校である、花巻東の野球部佐々木洋監督が菊池雄星の存在があり、大谷翔平を有利に育て上げられたと語ってもいる

小出監督にとって長女有森、次女鈴木、三女高橋のマラソン三姉妹と語っているように、有森、鈴木の経験値が、高橋を金メダリストにした試金石になっている

『多くの選手に囲まれて私が指導された』
と語られているように指導の経験値が高橋を生んだことは想像に難くない

 

 

 

[参考文献]
小出義雄「夢を力に!」株式会社ザ・マサダ
小出義雄「夢を力に!大化けの方程式」株式会社ザ・マサダ
小出義雄「高橋尚子 金メダルへの絆」日本文芸社

 

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