平井伯昌(のりまさ)五輪金メダルの北島康介を発掘し育てた男の教え5選②

指導者学

平井伯昌(まさのり)五輪2大会2種目金メダルの北島康介を発掘し、育てた名伯楽
その後数々のメダリストを育て、最近では萩野公介、寺川綾にも指導に当たる
現在は東洋大学で教鞭を執りながら同大学水泳部監督、また日本競泳代表ヘッドコーチも務める指導法とは?

 

北島康介の「目」から発掘する

平井は当時中学2年生の北島康介を発掘するわけだが、北島の「目」、眼光の鋭さに惹かれて8年後のアテナオリンピックを目指すことにした

「目は口ほどに物を言う」

中学2年生の北島康介は「メチャクチャ体が硬く」、体が細く、声をかけても反応のない、そして際立った身体能力を備えた子ではなかったという

だがしかし、泳ぎからの気迫が伝わってくるところがあり、中学2年生にしては芯の強さを感じたという

以前プロ野球の広島のスカウトマンがドラフトで技量、身体能力はもちろんだが、最終的にプロ入りしてから重要になってくるのが精神的なタフさ、向上心だと言っていたのを思い出す

アスリートを育てる上で必要かつ最重要な部分「精神力」、「絶対に諦めない姿勢」は平井のセレクトする基準からも伺える

 

転んでもただでは起きない

失敗の経験は選手にとって重要な糧になる

その時どう対処するかで、結果が全く違ってくるもの

失敗を悔やんでいるのではなくて「じゃあ今は何をすべきか」

「まだ何か他にできないか」を考える

それしか条件が与えられない時はそれを最大限利用してなんとかする

また他に取り組んだことが別の成果につながることだってある

そいう自由な発想を持つことが、何かことが起きた時に対処できる能力がそなわる

 

ティーチングとコーチングを織り交ぜる

ティーチングとは「今はわからないけど将来わかるようになるよ」と挨拶の仕方や掃除の大切さを教え込むようなこと

コーチングとは相手に問題点を気づかせて自分で解決させること

一見するとティーチングは基礎づくり、その後の応用がコーチングと理解されるが、アスリートを育てるにはティーチングに戻る場面も必要になる

ティーチングはレベルが低く、コーチングはレベルが高いのではなく、次のレベルに行く時にはティーチングに戻ることも必要なのである

ティーチングという基礎の先にコーチングという応用があるとするなら、応用の次に応用を行うのではなく、応用の後に基礎に戻ってがむしゃらにやることも大切

子供の自主性が出るまでは、大人が導いてあげることが必要になる

大事なのは努力して伸びる経験をしたとき、成果が出た時にキチンと評価してあげること

「伸びる為には自分が一生懸命努力しなくてはいけない」という気持ちが生まれる

これが俗にいう「成功体験」であり、それが必要性になるのです

最終目標は独り立ちして、自分で判断できる人間に育てること

 

言葉に出したら責任を持つ

言葉にする、紙に書くことはモチベーションが上がる

メダルを「獲れればいい」くらいに考えている人が、その場の勢いで「絶対、獲ります」などといってしまうことがある

そんなときに、気持ちと言葉にギャップが生まれ、プレッシャーの種となってしまう

言葉に出したら責任を持つ必要がある

 

戦略から戦術を組み立てていく

オリンピックに行くために、この厳しい練習をしている

練習を積みあげたプロセスの先にオリンピックを設定したのではない

オリンピックという最終目標から逆算して、後ろの方から練習計画を決めて追い込んでいった

どうやってもこれは勝てるという確信がもてるところまで選手もコーチも追い込んでいく

明確な数値目標を掲げ、ゴール設定をすることで選手に覚悟を決めさせる

 

 

[参考文献]
平井伯昌、折山淑美「泳げ!北島 金メダルまでの軌跡」太田出版
平井伯昌「最高の自分を鍛えるチームの力 なぜ競泳日本は11個のメダルを取ることができたのか?」マガジンハウス
平井伯昌「世界でただ一人の君へ 新人類 北島康介の育て方」幻冬舎
平井伯昌「見抜く力 夢を叶えるコーチング」幻冬舎新書
平井伯昌「平井式アスリートアプローチ 北島康介を育てた親が明かす心の交流術」ベースボールマガジン社

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